第67章 澱(おり)の中で$
何故、茸?
と思わなくもないが、白藤が笑っているなら、それで良いと思えた。
竹林を抜けて小高い丘に出る。
「見事な夕焼けですね……」
「あぁ。母上の瞳と同じく茜色だ」
「………暖かい色ですね。杏寿郎様や槇寿郎様、千寿郎君の瞳にも茜色が宿っています」
その言葉にほんの少しだけ胸を高鳴らせる。
「さて、冷える前に帰ろうか」
ーーこぽ。
「む?藤姫殿、何か言ったか?」
「いえ?」
おそらく、胎動が伝わったのだろう。
こぽこぽと水音がする。
まるで、話しかけられているように。
その度に怖気(おぞけ)が走る。
"ここに居る"と言われているように。