第67章 澱(おり)の中で$
「藤姫殿。入っても構わないか?」
杏寿郎の声だ。
「はい」
「では、一度下がりますね」
千寿郎が一礼し、入れ替わりに杏寿郎が入室した。
「……すまない。食事中だったか」
そう言いつつもお味噌汁をゆっくり啜(すす)る私を眺めている。
「杏寿郎様、何かご用では?」
「あぁ。君が言っていた通り、冨岡の元には竈門少年が付いているから心配は要らんぞ」
「そうですか」
ホッとした様な顔の白藤を見て、杏寿郎は続ける。
「君は、本当に冨岡が大事なんだな」
「えぇ。こんな私を受け入れて下さるんですもの……」
彼の為なら、なんでも出来る。
「羨ましい限りだな…」
「はい?」
「いや。何でもない」
「そうですか?」
杏寿郎の煮え切らない態度に怪訝な表情を浮かべる白藤。