第67章 澱(おり)の中で$
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「炭治郎ハ今日、藤ノ屋敷デ過ゴス、カァー!」
「そうか。分かった」
炭治郎の鴉にクルミを渡し、頭を撫でてやる。
「カァー、美味イ!」
「そうか。ご苦労だったな……」
「ジャア、マタナ!」
炭治郎の鴉は藤の屋敷を目指し、南下していく。
鴉を見送って、冨岡が屋敷の中へ戻る。
「義勇、帰ッタノカ?」
「寛三郎。起きたのか?丁度湯も沸いた。体を拭いてやろう……」
お湯で濡らした手ぬぐいを絞って老いた鴉の羽を吹いてやる。
気持ちがいいのか、義勇の手に身を任せ、されるがままになっている。
「カァー……」
この鴉は人間で言えばとうに七十を超えているのだ。
当然老いてきている。
だが、実直で優しい鴉だ。