第65章 慟哭$
「杏寿郎。体の鍛練ばかりでなく、精神も磨くように……」
珍しい。
あの父からの助言が。
「はい!」
俺は嬉しかった。
決して褒められた訳ではないが、こうして二人で会話をしたのは何年ぶりだろうか。
そんなことを考えていた俺は次に発せられた父の言葉に愕然とした。
「……ありえん」
「何があり得ないのですか?」
「お前ももう柱の一角だ。彼女の施術は受けているだろう。藤姫殿の回復術は閨でこそ、発揮される」
「藤姫殿には何度も助けられています。無限列車の折りは本当に……」
「ならば、分かっているだろう。藤姫殿はお前に避妊を迫ったことはあるか?」
避妊?
藤姫殿はいつもそのまま出してくれと懇願していたはず。
「『私は子が出来ません。安心して中で果てて下さいませ』彼女はいつもそう言っているはずだ」
覚えはあるが、その言葉を父から聞かされるとは……
「あ!子が……」
「そうだ。彼女は子が出来ない」