第64章 絡む糸
「冨岡さんと白藤ちゃんかぁ。おめでたいわね。ね、伊黒さん」
「む?そう、だな……」
事情を知らない柱たちは祝福を鎹鴉経由で冨岡の元へ。
冨岡は焦った。
憔悴しきった白藤には聞かせられないと……
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鎹鴉経由で白藤の懐妊の報が柱に伝わる。
「………これは……白藤さん。大丈夫かしら?」
共同研究者である珠世から事情を聞いていた胡蝶は困惑した。
本来、喜んで当然のこと。
だが、今回は……
腹の子は産んではいけない子。
「私の毒では歯が立たない……」
母体が白藤だ。
だとすれば、腹の子も私の"藤の毒"では殺せない。
となれば、産まれてから日輪刀で頸を斬るしかない。
だが、相手は鬼だ。
人のようには産まれないかもしれない。
腹を突き破って産まれてくる可能性も……
どちらにせよ、出産ならば母体に深刻な負担が出るかもしれない。
胡蝶は一抹の不安を拭えずにいた。
-了-