第64章 絡む糸
「すみません……」
「気にするな……」
視界がぐるぐると回る。
ダメだ、本当に吐く。
「うぇ……」
吐き出してしまったものが冨岡の羽織にもかかってしまった。
「あ……申し訳……うっ……」
「大丈夫だ、そのまま吐き出してしまえ…」
時折ゲホゲホと噎(む)せながら、胃の中にあったものを吐き出す。
程無くして吐き気はおさまったが、タライの中に吐き出した吐瀉(としゃ)物や汚してしまった羽織を全て冨岡に処理をさせるのが申し訳無くて……
「ひくっ……」
しゃくり上げて泣いてしまう、そんな日々を繰り返していた。
最近、白藤の様子がおかしい。
泣いていると思って寝室に行けば放っておいて下さいと言われるし、立ちくらみを受け止めれば、突飛ばされそうになる。
俺は何か気に障る事をしただろうか?
冨岡は彼なりに悩んでいた。