第61章 藤姫の帰還
「えぇ。知ってますよ」
こういう時は嘘も方便、ですよね?
「そうなんですか。猗窩座様見た目は何となく怖そうだけど、とっても優しいんですよ?昨日も私の為に魚を捕って来て下さいました」
「そうなんですか?」
猗窩座という鬼は存外に、同族には優しいということなのかしら?
「それに……」
「それに?」
「私の食事に付き合って下さいましたし……」
「食事……」
白藤さんの食事は、性行為ですよね?
やっぱり……
冨岡さん、余計にショックなのでは?
って、聞こえて無いですねー?
というか、いつまで固まっているつもりなのでしょう?
「冨岡さーん、いつまでそうしてるんですか?」
「…………」
ぱんっ。
「冨岡さん。いい加減、しっかりしてください!記憶が無いとはいえ、ちゃんと白藤さんが見付かったんですから。早く帰ります、よ……」
シャッ。
何か分からなかった。
私の頬に猗窩座という鬼の拳が掠めたのだ。
そんな、気配にすら気付けなかったなんて……