第60章 谷底の社$
彼女が言う体の変化とは。
まず、黒髪が白髪のように白く染まったこと。
日中は体を動かすことが困難になったこと。
特に陽光を直接浴びると、その箇所の肌が火傷のように黒ずむこと。
あとは夜に熱に浮かされるようになったこと。
自分の時は、無惨様が血を分けて下さって、そのまま鬼になったはずだ。
そんな、まどろっこしい流れではなかった筈だし、薬師………?
「十六夜……」
ドクン。
何だ?この違和感は。
噎(む)せるような花の香り、体の熱を昂らせるような心拍の上昇。
これは、十六夜の血鬼術か?
にしても…………
俺は上弦だぞ?
十二鬼月にも属していなければ、鬼としても半端な小娘相手に、この俺が遅れを取ったというのか?
藤色の瞳がこちらを見つめる。
「猗窩座様」
背筋に指が這わされるような……
そんな感覚に捕らわれる。