第60章 谷底の社$
「私ばかりご馳走になってしまったので、何か猗窩座様にお返しを……」
「見返りか?」
「え?はい。何かありませんか?掃除でも洗濯でも……」
「ふっ…」
猗窩座の口角が上がる。
「猗窩座様?」
「数字も持たない鬼の娘に気を使われるとはな」
「え?すみません!あの……」
何か失礼なことを言ってしまっただろうか?
「いい。構うな」
猗窩座はとんと軽く白藤の肩を叩いた。
何だろう、今の感じは。
前にも誰かから優しく肩を叩かれたような…?
「何だ?」
「いえ…」
何かに後ろ髪を引かれる感じがする。
誰に…?
「十六夜、こっちへこい」
猗窩座に手招きされ、白藤がそちらへ向かうと、目の前に座れと促される。