第60章 谷底の社$
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ドチャッ!
落下音がしたため、猗窩座は根城である古びた社の外に出た。
この山は標高が高く、空気が薄い。
加えて一年を通し、霧に囲まれたここは人の目を避けるのに適していた。
麓の村から山に迷い混む者、あるいは『鍛練』中に谷底に落ちてくる人間を彼は補食していた。
戦うことは好きだが、食事にはあまり執着をしない猗窩座はどこぞの僧の様な暮らしをしていた。
必要以上に人を喰わない、襲わない。
自分に無益な殺生は基本的にはしない主義である。
ただし、前述した通り、鍛練中の若者は別だ。
ここには『狹霧山の天狗』と名をはせている鬼殺隊の育手がいる地。
育ち切らず、山から去る者や滑落してくる者は残さず喰らっていた。