第8章 上弦の陸
とにかく、この鬼の間合いから逃げなくては。
白藤は廓の主人の手を引き、必死に走る。
「なぁ!雪白!!あれは一体何なんだ!?」
「あれは『鬼』です。蕨姫花魁は鬼が化けていたんです」
「蕨姫……あの化け物が……」
化け物。
そう、人間にとって、鬼は人を食らう化け物だ。
「そうです、だから逃げて下さい。出来るだけ遠くに!!」
白藤の剣幕に押され、ようやく廓の主人も必死になって走り始めた。
「白藤さん!!」
「炭治郎君!!気をつけて、帯に捕まらないようにして!」
「帯!?」
炭治郎の眼前に桃色の帯が迫ってくる。
「っ……!!」
何とか反応して刀で防ぎ、体勢を立て直した炭治郎は勢いそのままに技を繰り出す。