The end of the story 【ツイステ】
第4章 stolenスイーツ!
食べるものくらい好きにさせて欲しい。
首を刎ねられるのが恐ろしい。
そんなローズハート先輩への不満や恐怖が寮生たちの中で溜まってきているのを感じて眉を顰めた。
____ぽたり。
「水の落ちる音……?一体何処で……」
賑やかの食堂の中で何故かはっきりと聞こえた音。
それは何かの始まりを示していることを私はまだ知らない。
「おーい!監督生ー、グリムー!次の授業に遅れるぞー!!」
「何ぼーっとしてるんだゾ?」
「う、ううん。何でもない、よ」
きっと気のせいだよね。
水にインクを垂らしたような違和感が頭に広がっていく。赤き君主が孤立していく様子をまざまざと見せつけられているようだ。
「大丈夫か?ぼーっとしているみたいだが、保健室にまだいた方がいいんじゃ」
「心配してくれてありがとう、デュース。でも、すっかり良くなってるから」
「後は体力育成のような運動系のものはないとはいえキツくなったら言ってくれ」
デュースはやっぱり優しいな。エースは意地悪だけど、私が女だと知ってから教室に入る時も自然とドアを開けて先に入らせてくれるから変なとこで優しさが感じられる。女だと知ってからも私との接し方があまり変わらなかったのが居心地がいい。
今までの関係が変わることを恐れていた私にとっては正直言って助かる。
「デュースとエースは優しいね。いつも助けてくれてありがと」
「き、急になんだよ!!そういうのやめてくれない?恥ずかしいんだけど!!」
「優しい…か。どういたしまして、監督生」
「オレ様だって子分にいつも優しくしてるんだゾ!」
「いや、お前は困らせてばかりだろ」
「ふなぁ…エースの方が困らせてるんだゾー」
もう二人とも……
売り言葉に買い言葉って感じでまた喧嘩が始まった。グリムの挑発にそんな簡単に乗らなくても……。私にとってはどちらも優しいと思うから喧嘩の必要はないのに。
「グリムだって優しいよ」
「だろーふふん」
えへんと胸を張るグリムを微笑ましくて撫でながら教室に向かっていると
不安な気持ちは消えていって水の落ちる音のことはすっかり忘れてしまったのだった。