第36章 後日談 廻り
歌仙兼定の場合 種明かし編
千歳「歌仙、何してるんだ?」
カラン。
歌仙「ああ。これは木簡を書いてるんだよ」
千歳「木簡?」
この音、どこかで。
歌仙「太郎太刀がね、この本丸の祈祷をしてくれることになってね。用意して欲しいと頼まれたんだ」
千歳「なあ、歌仙…」
歌仙「なんだい?」
確証はない。
でも、聞いておきたい。
千歳「歌仙、お前も梓の持ち物だったのか?」
雰囲気が変わった。
歌仙「……どうして、そんなことを聞くんだい?」
千歳「あの日、私を本丸へ招いたのは…」
クス。
彼は私の前で妖艶に笑う。
千歳「どこかで…私を見ていたんじゃないか?」
木札の乾いた音を、音の響きからてっきり神社に置いてあるような大きな鈴の音と勘違いしていた。
歌仙「は。つくづく抜け目ないね、君は。まさか木簡で気付かれるとは。ははは」
乾いた笑い声を上げる歌仙。
千歳「あの日、本当は私を梓の本丸に連れて行くつもりだったんだな」