第1章 第1話 誘い(いざない)
「ここは、どこだ?」
「おほん、ここは本丸でございます」
声がした方を見ると足下にあった小さな塊が動き出した。
何かと思って見ているとそれはどうやら顔に装飾を施した狐だった。
にしても、ヤケに怯えている。
「貴方は審神者に選ばれたのです」
狐が何やら喋り出す。
これは夢か?でなければ、狐が言葉を話すなどバカらしい。
とりあえず本丸と言われた場所から外へ出ようとした、が…
「痛っ」
「まだ審神者様の登録がなされていませんので外へお出にはなれません」
「おい、狐」
「私めはこんのすけと申します」
「じゃあ、こんのすけ。登録を済ませれば、外に出れるのか?」
夢なので狐がしゃべろうともうどうでもよかった。
こんのすけ「はい!」
「それなら早めに済ませてしまおう。それで登録はどうすれば良いんだ?」
こんのすけ「はい、まずは本丸内にて初期刀を選んで頂きます‼️」
「初期刀?」
@@@
本丸内にて
こんのすけ「では審神者様、この五振りの中から初期刀を一振り選んで頂きます」
「刀の後ろに居るのは誰だ?」
こんのすけ「何と⁉️顕現なさる前から刀剣男子の姿が見えているとは⁉️」
「刀剣男子?」
こんのすけ「彼らは刀剣の九十九神でございます」
「刀剣、なら私は自分のドスがあるから要らんな」
こんのすけ「へっ⁉️」
「自分の家に愛用の短刀があるんだ」
こんのすけ「ヒェッ。そ、それはなりません。この五振りからお選び下さい!決まりですので‼️」
顕現というものは分からないが、五振り全てに刀剣男子と呼ばれる者達が控えているのが見える。
全体を見ようとした時、ふと視界の隅で衣擦れの音がした。
そこにいた刀剣男子は五振りの中で一人だけ白い布を目深に被っていた。
まるで、自らの顔を隠すように。
「ふん…」
ヒュンッ。
一振りを手に取り、腰に挿してみる。
「なら、こいつで決まりだ」
すると、先程控えていた刀剣男子の朧気だった輪郭がしっかりと人のそれと重なる。
「俺は山姥切国広…」
「最初から気にくわなかったんだ、お前」
ガッ。
そのまま山姥切国広の布を剥ぎ取ろうとする。
山姥切「やめっ」
「私を主にするつもりなら布を脱げ。仮にも男なら、胸を張って堂々と私の横に居ろ」