第7章 衝動と反応と【赤葦京治】
穂波ちゃん。
目の前にいる子の名前だ。
たまに訪れる大型の書店で出会い、
なぜか俺は名前も知らないうちから彼女をお茶に誘い、
一緒にギャラリーで絵画をみて、
そして今、駅まで一緒にきた。
何がこうさせたのか。
初対面の彼女の笑顔や佇まい、無邪気な人柄、
それでいて落ち着いたトーンの声、喋り方。
そのギャップみたいなもの…
彼女も本が好きなようで、話が尽きない。
淡々と、穏やかに、それでもいくらでも話題がそこの方から溢れ出てくるような。そんな感じだ。
そのせいもあってか、どこの学校に通っているのか、部活はやっているのか、
そういったよくある会話で知り得るようなことを知らないままでいる。
…彼女のことをもっと知りたいと思う。
「穂波ちゃん、俺たちまた、会えますか」
改札で尋ねる。
『…ふふ。どうかな?会えたらそれはすごいことだね。巡り合わせ』
連絡先を…と言い出した俺のタイミングと
穂波ちゃんの声が重なった。
先に言おうとしていたことを話してもらおうと促すと、
穂波ちゃんは書店でも一期一会と言っていたように
今日の出会いを、今日限りのものだと心から思っているのが十分に伝わってくるような…
そんな感じで今日過ごした時間の感想というか、礼の言葉というか、
そういった感じの言葉を俺に伝えてくれた。
…今日限りの出会い。
そうなのだとしたら…