第12章 例えばの話【孤爪研磨】
おれの彼女は今海外にいて、いわゆる遠距離っていうやつをやってる。
遠距離になってから今、一年くらい。
夏休みの間も希望してクラスをとってて、
いそがしくしてる穂波のところに何度か来客があって、
その度に何かしら起きてる。
キスされたり、イかされたり、キスマークつけられたり、何かしら。
それでその度思うんだ。
おれのなのに。むかつくな、おれのっておれももっとしたい。
けど隙だらけで奔放でのびのびしてる穂波がすきだな、とも同時に思う。
だからまぁしょうがない、
悪意を持って近づいてる奴らだったらそうは思わないけど、
純粋に穂波のことが好きで、
好きな相手が穂波だから、ことが起こってしまう、
傷つけようとしたわけじゃない、本当に自然にそうなっちゃっただけだから、ってなる。
だから、いつも、別に無理してるとかじゃなくって、
まぁしょうがない、ってとこに行き着く。
それは本当。
本当に本当なんだけどでもさ、やっぱり穂波はおれのだから。
おれのって本当にわからせるには、おれのってするには、
他の男に触らせないようにするには例えば、とか考えてみたりは、する。
だからこれからするのは例えばの話。
こんな風にするのも良いな、って考えはするけど、
絶対、いやきっと、実際にはすることはない例えばの話。