第2章 すきなひと。(総北逆ハー)
「っくあーーっ!!シンドーーッ!!」
「僕もっ…もう脚が震えてるよ…っ!はは…」
「これくらいでだらしねーぞ、もうすぐ合宿だってあるんだ」
今日の最初の練習は学校の裏門坂100本アタック。
競い合うように終えた今泉と鳴子。
その後に続いてノルマを終えた小野田が地面に腰を下ろす。
「の、割りにスカシ!お前もめっちゃ汗出とんでー」
「卒業した金城さんたちが同じ練習を簡単にやってのけちゃったのを思い出したよ…すごかったなぁ」
「はーっ!こんな時に傍で応援してくれる女子がおったら何本でもアタック出来るんやけどなー!!」
「えっ?えっ!?じょじょじょ…女子…!!」
「何くだらねー事言ってんだ鳴子」
鳴子の何気ない一言に小野田は赤面して慌てふためく。
反対に今泉は冷めた目で鳴子の言葉を一蹴した。
「とかなんとか言ってスカシ!お前もホンマはその方がやる気出るんちゃうか!」
「……………そんなわけ、ないだろう」
「あっれェー?何か想像しよったやろ!!」
「馬鹿野郎!俺は何も……!」
「今泉くんのタイプの人ってどんな人?僕はまたそう言うの全然ピンとこなくって…あはは…」
小野田のそんな一言に今泉はピタリと動きを止める。
好きなタイプ。
そう問われて浮かぶ1人の顔。
「俺は、周りの事によく気が付いてよく笑って…少し抜けてる所が逆に放っておけないって言うか…」
「へぇ〜!具体的なんだね!鳴子くんも聞いてもいいかな?」
ふむふむと楽しそうに聞く小野田とは裏腹に鳴子は今泉の答えを聞いて目を見開いていた。
スカシ、お前。
それって1人しかおらんやないか。
「ワイの好きなタイプはな、小野田くん」
「うんうん!」
「人の頑張りを認めてくれて、泣いてくれる。優しゅうて優しゅうてワイが守ったる!ってそう思える女子や!」
小野田に話しているのに鳴子の目は今泉を睨みつけている。
「………そうか、お前も」
「あぁ、そうや!お前だけには絶対渡さへんけどな!」
「言ってろ、お前とは釣り合わねぇ」
「何やとー!!?」
「ちょっと2人ともどうしたのさ急に!」
急に揉め始めた今泉と鳴子に小野田が急いで仲裁に入る。
そんな騒がしい3人の所へ遅れてゴールをした手嶋と青八木、一年生鏑木が自転車を押してやってきた。