第65章 演練大会ーその後ー
今日近侍だった鶴丸は、燭台切と一緒に粥を作り、レンの部屋を訪ねる。
「レン起きてるか?」
ぴたりと閉められた襖からは何の返事も帰ってこない。
鶴丸は寝ていると判じて、そろりと襖を開ける。
「入るぞ〜。」
レンの部屋は、手前が書斎部屋になっていて、奥が寝室だ。
書斎部屋には、木の丸テーブルがあり、書類をしまう棚があり、机がある。
いつもは雑然としている部屋だが、今は綺麗に片付けられていて、こざっぱりしている。
鶴丸は丸テーブルに粥を置くと、レンの様子を見ようと寝室の襖を開けて驚いた。
「……!」
まず目に飛び込んできたのは、三日月の横たわった後ろ姿だった。
どういうことか、と頭側に回り込むと、内服の三日月がレンを抱き込んで眠っていた。
「三日月…!お前…!」
鶴丸は怒鳴りそうになって、既のところで声を抑えた。
「…んん…?…おぉ、鶴か。」
目を覚ました三日月は、枕元に立っている鶴丸に気づいて、笑いかける。
「何が鶴か、だ…!何やってんだ…!」
鶴丸はレンを起こさないように声を落としながら三日月に詰め寄った。
「いや、なに。レンの様子が気になってな。来てみたら、寒い、寒い、と言うもので、こうして暖めてやったのよ。」
ははは、と笑う三日月に、鶴丸は額に手を当てて脱力した。
「だったら湯たんぽでも何でも持ってきてやればいいだろう?何で人肌で温めようと思うんだよ…。」
「はははっ、すまんすまん。レンの目を見ていたらつい、な。」
「レン、起きてたのか?」
「寝ぼけているようだったから、覚えていないとは思うが。不安そうに見えてな。」
それを聞いてしまうと、鶴丸も何も言えなくなってしまう。