第7章 007
鮫島はフンと鼻を鳴らすと、組んでいた足を踏み入れ解きガバッと広げ、今度は腕を組んだ。
一見横柄な態度にも見えなくはないが、成瀬は鮫島に向かって小さく頭を下げ、「ありがとうございます」と言った。
「俺がこの部屋に来たのは、最上階のラウンジでランチを済ませてからだから、大体14時頃…だと思う」
「ランチはお一人で?」
「いや、のんたんと一緒だ」
「のんたん…、ですか?」
「俺の部下で秘書ののんたんだ」
「なるほど…。では、そのことを証明出来る方は?」
世界にも名を轟かせる鮫島を前に、成瀬は全く臆することなく、冷静に質問を繰り返した。
そして鮫島も、
「ラウンジのホールスタッフと、後は防犯カメラをチェックして貰えれば分かる」
余程疑いの目を向けられたくないのか、とても従順に質問に答えて行く。
「分かりました。防犯カメラについては、後々確認することにして、その前…つまり、ランチの前はどこに?」
「それは…、オフィスにいたに決まってるじゃないか」
「証明出来る方は?」
「企画開発部の全員が証人だ」
鮫島は、“どうだ”と言わんばかりに胸を張り、ふんぞり返った。
「ありがとうございます。では、次は…」
成瀬の目が、部屋の片隅で片膝を抱える健太に向けられた。