第7章 007
「と、と、とにかく! その弁護士さんとやらに何を聞かれても、何も喋んじゃねぇ。分かったな!」
まるで、翔太郎には一切口を利くんじゃないとばかりに、ピシャリと言いつけ、健太はシャワーコックを捻った。
「おら、行くぞ」
掃除とは言った手前、長居をすればそれだけ疑いの元になる。
健太は持ち込みはしたももも、全く使うことのなかった掃除道具を一纏めに持つと、翔太郎よりも一足先にバスルームを出た。
「ご苦労だった。“ターゲット、フルスピード、トゥーマンス”をモットーとする俺からすると、少々時間がかかり過ぎではあるが、仕事熱心なのは歓迎だ」
すかさず労いなのか嫌味なのか…、声をかけて来た鮫島が健太の肩をポンと叩く。
「は、はあ…、とうも…」
適当に言葉を返す健太だったが、実際には掃除なんてしていないのだから、返事に困るのも当然だ。
それは、後に続いて出てきた翔太郎も同じで…
鮫島に肩を叩かれても、頭を下げる以外のことはせず…というか、馬鹿正直な翔太郎だから、健太に「喋るな」と言われたことが影響しているのかもしれない。
「じゃあ…、掃除終わったんで、俺達はこれで…」
今度こそ…
健太は翔太郎に合図を送ると、二人して鮫島に頭を下げた。