第7章 007
バスタブに溜まった湯から立ち上る湯気と熱気で、バスルームがサウナ状態になって来たところで、健太が両手で膝を叩いて立ち上がる。
そして今度は翔太郎の腕を掴んで無理矢理立たせると、ほんの数時間の内でゲッソリと痩けたように見える翔太郎の頬を、ムギューッと指で摘んだ。
「いてててて…」
「いいか、その弁護士さんとやらにもし何か聞かれても、俺達は知らぬ存ぜぬを通すんだ」
「で、でも…」
「でももクソもないだろうが…。このままだと、俺達は確実に弘行殺しの容疑者にされる」
「そ、そんな…。だって俺達が来た時にはもう…」
そう…、翔太郎と健太が、この「0号室」に足を踏み入れた時には、もう既に弘行はこの世の者では無かった。
それでも二人が第一発見者であることは間違いないし、そうなれば真っ先に容疑をかけられるのは、当然翔太郎の健太と言うことになる。
「あ、で、でもさ、その何とかっていう弁護士って、どんな事件でも無罪にしちゃうんでしょ? だったら…」
「バカか、お前は…」
あまりに能天気な翔太郎に、健太は呆れたとばかりに頭を抱えた。
「あのなあ、無罪とかじゃなくて、そもそも俺ら殺してねぇし…。それに…」
仮に容疑が晴れたところで、取り調べやらなんやらで、数日間拘束されるのは間違いない。
曲がりなりにもタレント業をしている健太が、殺人の容疑で拘束されたとなれば、メディアの格好の餌食になり…