第7章 007
「鮫島ホテルズの顧問弁護士で、成瀬領と言って…、世間では“天使の弁護人”と呼ばれているらしいが、聞いたことはないかい?」
言われて、大野は自身のスマホにブラウザを起動させ、“成瀬領”の画像検索をかけた。
そして、ニュース番組の一コマだろうか、スマホの画面に画像を拡大表示させて。
「あ、この人見たことあるわ…」
大野のスマホを覗き込んだ翔太郎が、驚いたように声を上げ、
「ああ、確か冤罪請負人とかなんとかって、聞いたことあるかも…」
健太も同調するかのように頷く。
その成瀬が、まさか鮫島ホテルズの顧問弁護士だったとは、翔太郎も健太も全く想像していなかったことで…
それもその筈…
二人が依頼人から受け取った情報は、全て“大野智”に関することばかりで、それ以外のことは全く聞かされていない。
そもそも、現状二人が置かれている状況は、その場にいる誰もが想像していなかったことなのだから、しょうがない。
「あ、あ、いっけね…。そう言えば、バスルームの掃除を忘れてたよ…」
何を思ったのか、翔太郎は健太の腕を引いて立ち上がると、キャップを被った頭を大袈裟なくらいに深く下げた。
戸惑ったのは健太だ。
突然無理矢理腕を引かれたかと思えば、強引に頭を下げさせられたのだから…