第6章 006
翔太郎はバスルームのドアが閉じられると同時に、二つに折り畳んだ携帯電話を開いた。
スマホとは違って、小さな画面には、何通ものメールを知らせる通知が表示されていて、内心面倒に思いながらも、翔太郎はメールを一通一通開いて行った。
そして未読になっていた全てのメールを読み終えると、最後のメールに『トラブル発生』とだけ返信をして、携帯電話を閉じた。
ついでに用を足し、スッキリとした表情でリビングへと戻った翔太郎に、健太が「何だって?」と問いかけると、翔太郎は何事も無かったように、
「“仕事は終わったか?”だってさ」
平然とした口調で返した。
“仕事”の意味が、大野の誘拐のことだとすぐに理解した健太は、翔太郎の肩に顔をよせると、
「それで、何て答えたんだよ…」
鮫島と何やら話をしている榎本を気にしながら、囁くように言った。
「どうもこうも…、ありのまま伝えるしかないじゃん?」
「まあ、そうだけど…」
翔太郎とコソコソと会話をしながら、健太は翔太郎から見せられたメールの文章を思い返していた。
確か…、大野を誘拐して、この部屋に監禁するまでが俺達の仕事で、そこから先のことに関しては、何も指示は無かった筈。
だとしたら…