第5章 005
「そんなことしたって開きませんよ」
背後から声をかけられ、鮫島の背中がビクンと跳ね、ドアノブを握る手がブルブルと震えた。
当然だ、鮫島は二人…いや、大野も含めた三人を、殺人犯だと思いこんでいるのだから…
自分も、ベッドで冷たくなった弘行と同じようになるのかと思うと、食いしばっていた歯も、自然とカチカチと音を立てた。
それでも毅然と振舞おうと、声のした方を振り返った鮫島だが、綺麗に撫で付けた前髪は乱れ、ネクタイは捩れ、何とも情けない姿で…
「あ、あのさ、何勘違いしてんのか知らないけど、俺らアンタが想像してるようなことしてないから…」
どうにか誤解をとこうと翔太郎が言うが、その顔は笑いを必死で堪えているのか、見事に引き攣っている。
「な、な、な、何が違うんだ!」
「だーから、殺したの俺らじゃないって言ってんの」
「じゃ、じゃあ一体誰が…いや、そんなことより、どうしてドアが開かない!」
弘行を殺したのが誰かを確かめるよりも、まず自分の身の安全を優先した鮫島は、再びドアノブに手をかけると、ドアノブが壊れてしまうくらいの力で引っ張った…が、やっぱりドアはピクリとも動かなくて…
「お、おい、そんな所にボーッと突っ立ってないで、手伝わないか!」
殺人犯かもしれないと疑いながらも、健太に助けを求める鮫島に、健太は勿論のこと、翔太郎も…大野も呆気に取られるしかなかった。