第5章 005
声高らかに自身のモットーでもある言葉を口にした鮫島は、床に束ねられた掃除道具の中から、毛バタキを手に取ると、ついさっきまで腰を抜かしてたとは思えない機敏な動きでテーブルの上から、ソファの座面から背もたれ、キャビネットの上、果ては観葉植物の葉の裏まで、毛バタキ一つで丁寧に拭き取っていき、最後にベッドサイドに置かれたテーブルの上に手を付けかけた時、
「そう言えば、この男…、さっきからピクリとも動かないが…」
鮫島の手が弘之に伸ばされた。
そして弘之の首元に指先が触れた瞬間、鮫島の顔から一気に血の気が引いた。
「お、お、お、おいっ! こいつ…まさか死んで…る?」
目の前の光景が信じられないのか、鮫島の目がベッドの上と、鮫島とは別の意味で青ざめる翔太郎と健太との間を、所在なさげに彷徨い…
漸く一つの結論に辿り着いたところで、
「ひ、ひ、ひ、人殺しっ…!」
悲鳴を上げながら後ずさり、バタバタと転げるようにして部屋の入口まで向かうと、ドアノブをガチャガチャと捻った…が、何度捻ってみてもドアはピクリとも動かなくて…
「な、な、な、なんで…っ」
ドアが開かないことへの焦りと、自分が殺されるかもしれないという恐怖とで、鮫島の額にはいつしか大粒の汗が浮かんでいた。