第5章 005
「な、な、何だ…よ…」
鮫島に指を差され、健太がビクンと肩を跳ね上がらせる。
その後ろで、大野の口を塞いだままの翔太郎が、ゴクリと息を飲む。
三人…いや、大野を含めて四人の間に、何とも言えない空気が流れた。
翔太郎は鮫島に見えないようにサイドテーブルに手を伸ばすと、無様に転がった電気スタンドを掴んだ。
プラグは倒れた拍子にコンセントから抜けている。
いざとなればこれで鮫島の後頭部を殴ってでも…
そしたらその隙にここから…
普段はおっとりとしていて、何を考えているかもわからないくらい、ぼんやりとした印象で、滅多に感情を露にすることのない翔太郎だが、鋭い眼光とキツく食い縛った口元には、しっかららとした意思が見て取れる。
それはある種の殺意にも似た感情で…
鮫島の肩越しに、今にも電気スタンドを振り上げようとする翔太郎を見た健太は、
やめろ、馬鹿な真似は止せ!
目で訴えかけるけど、一旦頭に血が上ってしまうと、途端に手が付けられなくなってしまう性格だということを、健太自身よく知っている。
ああ…、これで俺達は本当に人殺しになるんだ…
諦めかけたその時、
「ターゲット フルスピード トゥーマンス!」
健太に向けていた人差し指を天井に向け、鮫島が声を張り上げた。