第5章 005
「は、はい、何でしょうか…」
極めて平静を装おうとするが、流石に動揺を隠せず超えが裏返る。
一巻の終わり…、咄嗟に脳裏に浮かんだ言葉に、二人の手が自然と震えた。
ところが…
キッチリとダブルのスーツを着込み、少々長めの前髪を顔にかからない程度に撫で付けた男は、人差し指を備え付けのキャビネットの上をスっと滑らせると、途端に眉間に皺を寄せ、唇を尖らせた。
「あ、あの、何か…? 俺達まだ仕事が残ってるんで…」
一刻も早くこの部屋から出たい一心で、翔太郎がリネン用のワゴンを押し進めようとする。
その後に、掃除道具を手にして健太も続く…が、
「待てと言っているだろう」
再度呼び止められ、足を止めた二人は一瞬天を仰いだ。
「お前達、これで掃除をしたつもりか?」
「え…?」
言われて翔太郎が振り返ると、スーツ姿の男は埃で黒くなった人差し指をピッと立てて見せた。
「まだ埃が溜まっているじゃないか。それからここも…」
男はキビキビとした動きでソファの周りを一周すると、テーブルとソファとの間に膝を着いた。
そして毛足の長い絨毯を手のひらでそっと撫で、何かを指で摘んだ。
「髪の毛が落ちているじゃないか。これではとても掃除をしたとは言えないんじゃないか?」
「は、はあ…」
威圧感たっぷりの男の口調に圧倒された二人…
その二人の目の前で、
「こっちはどうかな?」
男のパーティションにかかった。