第4章 004
「仮に…ですけど、もし弘行がそのヘンテコなメールの送り主の仲間だったとして、どうして俺を誘拐なんて?」
翔太郎が立てた仮説に、意義を唱えたのは大野だった。
「弘行と俺は、確かに別れはしたけど、円満だったし、恨みを買うようなことは何もなかった筈なのに…」
大野は信じられないとばかりに頭を乱暴に掻き毟ると、天井に向かって長く息を吐き出した。
健太や翔太郎でさえ、この状況に困惑しているのだから、わけも分からないま誘拐され、こわな場所まで連れて来られた大野が混乱するのは当然だ。
「アンタらの関係がどうだったかは知らねぇけど、弘行さんがあの状態じゃどうにもなんねぇんじゃねぇの?」
「そうそう、それにあくまで“仮に”って話しだからさ、弘行さんが関わってるとは限んないじゃん?」
「つか、お前が変なこと言い出すから、こうなっちまったんだろうが…」
「悪ぃ悪ぃ」
健太に睨まれ、翔太郎はおどけた様子で肩を竦め、「よし!」と膝を両手で叩くと、勢い良く…どっしりとしたソファがひっくり返るくらいの勢いで立ち上がった。
「とりあえずさ、弘行さんのことはほっといて、ここから抜け出すこと考えない?」
「確かにな…。でも…」
部屋中を隈無く探しても、アリの子一匹抜け出せる隙間がないことを、部屋をぐるりと見回しながら、健太は思い出していた。