第4章 004
再び訪れた沈黙の時間に痺れを切らしたのは、やっぱり…と言うべきだろうか、翔太郎だった。
「俺、もう一回試してみる」
「何をだよ」
眉間に皺を寄せ、怪訝そうな顔をする健太を無視して、勢い良く立ち上がった翔太郎は、テーブルの上に置かれた携帯電話を掴み、早足で部屋の入口まで向かうと、カードスイッチに刺さったままのカードキーを引き抜いた。
途端に暗くなった室内で、携帯電話の画面の明かりだけがぼんやりと灯った。
「それはさっき何度も試しただろ?」
「でもさ、分かんないじゃん? こういうデカいホテルとかって、システムのトラブルがどうとかって良く聞くだろ?」
「確かに…」
もっともらしいことを言う翔太郎に、今度ばかりは健太も頷くしかなく、キースイッチからカードキーを抜き差しを繰り返す翔太郎の横で、何度もドアノブを捻った。
しかし…
「やっぱ駄目か…」
何度試してみたところで、結果は同じ…、ドアは固く閉ざされたままで、一向に開く気配はなく…
二人は同様に落胆した表情のまま、再びソファに腰を下ろした。
その時、ガチャン…と、ロックの外れる音がして、三人は一斉に部屋の入口に視線を向けた。
そして、ゴクリ…と、誰かが息を飲むのが聞こえた。
『004』ー完ー