第4章 004
大して驚くでもなく、表情を変えることなく携帯電話に表示された文章を読み終えた大野は、静かに携帯電話をテーブルに戻すと、それまで平然としていたのが嘘のように顔を険しくさせ、首を捻った。
そして再度携帯電話を手に取ると、訝しげに二人の顔を交互に見た。
「で…、俺はおたくらに誘拐された…ってこと、なんだよな?」
「まあ…、そういうことになるよ…ね?」
「ね、ってお前…」
健太が呆れるのも無理はない。
最初に誘拐の話を健太に持ちかけたのは、他でもない翔太郎なのだから。
ただ翔太郎に任せておいても、話は前には進まないと思ったのか、健太は溜息で吐き出した空気を取り戻すように、深く息を吸い込んだ。
「で、でも一体誰が?」
「さあな…。俺らはこのメールの送り主、つまり依頼人の指示通りに動いただけだし…」
「そう…なんですか…」
「あんたは? あんたは、この依頼人に心当たりあんのかよ」
健太の問に、大野が困惑気味に首を横に振る。
「なんかあんじゃないの? ほら、誰かに恨み買ってるとかさ」
翔太郎にしては随分真っ当な質問に、健太もうんうんと頷きながら、大野の顔を覗き込んだ。
…が、やっぱり大野は首を横に振るばかりで、二人は顔を見合わせ肩を落とした。