第4章 004
「お前なぁ…」
肘鉄の次は拳骨でもお見舞してやろうかと、拳を振り上げた健太だったが、
「違うんです…。他に好きな人をつくったのは、弘行じゃなくて俺の方なんです。片思い…だったけど…」
予想もしていなかった衝撃発言をする大野を前に、力なく下ろすしかなかった。
当然だ、さっきまで死体になった“元”恋人に泣き縋っていた男が、別の相手に恋をしていたとは、健太は勿論、翔太郎だって思ってもいなかったことだ。
二人は顔を見合わせ、脱力したように肩を落とした。
「えっと…、じゃあさ、別れ話は大野さんの方から?」
「それは…」
翔太郎からの問いかけに、違うとばかりに首を横に振る大野。
それには流石の翔太郎も首を捻ったが、
「つかさ、アンタとあの死体とどんな関係だろうが、アンタが誰を好きになろうが、知ったこっちゃねぇ。今はとにかくここから出る方法考えねぇと…」
健太のもっともな提案に、翔太郎は大きく頷いた…が、状況が把握出来ていない大野には、何のことだか意味が分からず、キョトンとした顔で二人を交互に見た。
それもその筈、突然見知らぬ男に攫われたと思ったら、次に目を覚ました時にはこの状況だったのだから、戸惑うのも無理はない。