第4章 004
謎の死体と大野がただならぬ関係であることは、大野の様子から見て取れた。
何しろ大野と来たら、死体が(ここはあえて…)知人だと分かるやいなや、死体に縋り付き、声を上げて泣き出すわ、挙句キスまでする始末で…
その光景を傍で見ていた二人は、ただただ呆然とするばかりだった。
そうして暫く経った頃、漸く落ち着きを取り戻した大野が、何をするでもなくソファで寛ぐ二人の前…、一人がけのソファにストンと腰を下ろした。
その顔は、相当泣いたのか、目の周りが赤く腫れている。
「あの…さ、こんなこと聞くのもなんなんだけど…」
翔太郎が大野の様子を窺いながら口を開く。
「あの死体…っつーか人って、あんたのその…なんつーか
…」
真っ先に口火を切った割に歯切れの悪い翔太郎に、健太は何度目かの溜息を落とすと、組んでいた足を解き、若干前屈み気味に身を乗り出した。
「あの人、あんたの恋人かなんかなの?」
普段の健太からは考えられない、あまりにもあけすけな物言いに、翔太郎は目を白黒させた。
「普通に友達とか知り合いってわけじゃないよな?」
「だ、だ、だよな! 友達にキスなんてしないもんな?」
相手が健太なら話は別だけど…、心の中で呟いた翔太郎の声が、健太に届いているのかどうかは…、甚だ疑問だが。