第4章 004
健太は力ずくで翔太郎の手からモップを取り上げると、それでも尚大野に飛びかかろとする翔太郎の肩を引き、パーティションごとなぎ倒した。
「痛ってぇ…」
腰を摩りながら、のろのろと立ち上がろうとする翔太郎に、健太はざまあ見ろとばかりに鼻を鳴らし、何が起きているか分からず、怯えた様子で身体を丸くする大野の前にしゃがんだ。
「お、お、俺のこともこ、こ、こ、殺すのか…!」
「はあ? あんた何言ってんの?」
「だ、だ、だ、だって…」
大野の震える指が、ベッドの上に横たわる死体に向けられた。
「俺らじゃないし…」
寧ろ、そう問いたいのはこっちだとばかりに健太は溜息と同時に方を落とした。
ただこの状況を見る限り、自分達が犯人だと思われるのは致し方のないことだ。
「あ、あれ…?」
何か言いたげに口をパクパクとさせ、健太と死体とを交互に見る大野の目が不意に止まった。
「あんた…、この人知ってんのか?」
「え、マジで? だ、誰だよ…」
大分痛みが和らいだのか、二人の元へと翔太郎が床を這い寄る…が、健太の眼光鋭い睨みに、咄嗟にその動きを止めた。
「え、えっと…、実はこの男は俺の…」
言いかけたところで、大野の頬を一筋の涙が伝った。