第4章 004
どうする…
見合わせた互いの目が語り合うが、密室状態になった部屋から出ることが出来ない今、二人に残された選択肢など一つもない。
もし仮にあったとして、それなりのリスクを負うことは免れない。
尤も、冷静な判断が出来ない以上、リスクは確実に倍増する。
翔太郎は意を決したように立ち上がると、部屋の片隅に纏めて置かれた掃除道具の中からモップを手にした。
「お、おい、何をする気だ」
咄嗟に引き留めようとした健太に、翔太郎は一瞥をくれることなく大股でパーティションの向こう側へと足を進めた。
当然、翔太郎の意図を察した健太も慌てて後を追った。
そして、
「や、やめろ!」
目の前で起きていることに戸惑いの表情を浮かべる大野に向かって、今にもモップの柄を振り下ろそうとする翔太郎を、後ろから羽交い締めにした。
「落ち着けって…」
「で、でも…」
翔太郎の言いたいことは、健太も短い付き合いじゃないから分かっている。
これがもし作り物のドラマであったなら、目撃者の口を封じておくのがセオリーだろう。
でも今目の前で起きているのは、ドラマでもなんでもなく、なんの偽りもない「現実」だ。
ましてや、健太も翔太郎も、ベッドで横たわる死体とは、顔さえ知らない全くの無関係だ。
殺ってもいない罪を被せられるのは、二人にとって得策ではない。