第3章 003
「あ、あれ…、おかしいな…」
翔太郎が、タオルで包んだドアノブを何度も捻りながら、首を傾げる。
照明が消えているせいで、翔太郎の表情こそ伺い見ることは出来ないが、息遣いだけでも翔太郎が焦っていることが分かる。
「おい、どうした…。早くしろよ」
焦っているのは何も翔太郎だけじゃあない。
健太は健太で、死体の傍に無様に転がしたターゲットが、物音を立てることで目を覚ますんではないかと、気が気じゃなかった。
「分かってるよ…、分かってるけどさ、開かないんだよ…」
「はあ? ちょっと代われ」
そんな馬鹿なことがあるかと、健太は翔太郎を押しのけ、ドアノブを握った…が、
「嘘だろ…? 何で…?」
渾身の力を込め、押したり引いたり、勿論上けたり下げたりもしたが、何をどうしてもドアが開く気配はない。
健太の額に、自然と汗が浮かんで来る。
「どうなってんだよ…」
通常ホテルなどのドアキーは、外側からロックされることはあっても、内側からロックされることは、殆どといって良いほどない。
「なあ…、俺達閉じ込められた…ってこと?」
一段と焦りを増す健太に拍車をかけるように、翔太郎が考えたくもない可能性を口にした。