第3章 003
「とりあえずさ、アイツが目覚ます前にここ出ようぜ?」
「そ、そうだな…」
このまま誰かも分からない死体と時間を共有すること自体が危険だと判断した二人は、寝袋の中から眠ったままの大野を引き摺り出すと、ベッドの脇に転がした。
その手には、おそらく絞殺に使った物だろう、死体の首に巻き付いていたタオルの端を握らせた。
完璧…とまではいかないが、これで殺人犯は大野というのことになる。
「よ、よし…、急ごうぜ…」
「お、おう… 」
二人は額に浮かんだ油汗を拭うと、キャップを被り直し、ひっくり返ったワゴンの中に、抜け殻になった寝袋と、床に散らばった掃除道具を突っ込んだ。
ただ一つ、翔太郎が放り投げたホウキを除いては…
キースイッチからカードキーを抜き取ると、照明が全て落とされ、窓一つない部屋は真っ暗な空間へと変わった。
手探りでドアノブを握り、ドアを開けようとして、健太がふとその手を止めた。
「どうした…」
「いやさ、指紋…。俺らの指紋…、残ってるよな?」
「あ、ああ、そう…だよな…」
「まずくねぇか?」
二人の脳裏に、刑事ドラマで良く目にする光景が浮かんだ。
「なあ、拭けばなんとか何じゃないの?」
翔太郎は首に巻いていたタオルでドアノブを拭くと、タオル越しにドアノブを握った。
ところが…