第3章 003
結局…、何をしてもドアが開くことはなく…
激しい運動をしたわけでもないのに乱れた呼吸を整えるために、健太も翔太郎も壁を背にその場に座り込んだ。
「なあ、どうするよ…」
「どうするって…、何が…?」
「何がって、お前…」
決まってるだろうとばかりに睨みをきかせるけど、何分明かり一つない空間では、それも功を奏さない。
健太は深い溜息を一つ落とすと、手にしていたタオルを忌々しげに床に叩き付けた。
「くっそ…、他に方法はねぇのかよ…」
「でもさ、窓とかも無かった…よね? ってことはさ、やっぱり俺達…」
らくたしたように肩を落とす翔太郎だが、その姿はやっぱり健太の視界に映ることはなく、余計に健太を苛立たせた。
「なあ、どうしてくれんだよ…」
「な、何が…?」
「俺、明日仕事入ってんだけど…」
健太にとっては、望んだ仕事ではないが、一度始めた以上途中で投げ出すことも出来ないし、何より先のことを考えれば、安易に手放すべきではない、と思うのは当然のことだろう。
勿論、それは翔太郎にとっても同じことが言えるのだけれど…
「と、とりあえずさ、方法考えない? 他に抜け道あるかも知んないしさ…」
暗闇の中、翔太郎が壁伝いに立ち上がり、手にしていたカードキーを、再びキースイッチに差し込んだ。