第2章 002
「お、おい、これってあのあれだろ…、鮫島ホテルの…」
有名ホテルのロゴが入った、しかもご丁寧に鮫島の正規品だと分かるタグまで入った物が、何故ここにあるんだと言わんばかりに翔太郎を見る健太に、翔太郎は僅かに肩を竦めて見せた。
ボストンバッグの中身については、依頼主からある程度の事前情報を受け取っていた翔太郎だったが、それがまさか“鮫島”の物だとは翔太郎自身も全く知らなかったことだ。
だから内心では健太と同様…いや、それ以上に驚いていたが、あえて動揺を表に出すことはしなかった。
コインロッカーからボストンバッグを取ってくるだけで激しく動揺していた健太を見ていれば、自然と自分がしっかりしないとと言う気持ちになったのかもしれない。
「お、おい、まだ何か入ってるぞ?」
健太に言われて再びボストンバッグの中を覗き込んだ翔太郎は、底板に貼り着くようにして置かれた茶封筒があることに気が付いた。
「中は? 開けてみろよ」
ボストンバッグの中身が爆弾でなかったことに安心したのか、今度はは健太が翔太郎を急かすが、ボストンバッグの中身同様、茶封筒の中に何が入っているのか、凡その予想が出来ている翔太郎は一切慌てることはなくて…
封筒の上から指で厚みを確認してから、ゆっくり封を開けた。
そして自分の手に向かって封筒を傾けた。