第2章 002
落ち着け…
こんなことでビビってんじゃねぇ…
健太は自分に強く言い聞かせた。
そうだ、健太には…いや、健太と言うよりは、“健太達”と言った方が正しいだろうか…
二人にはこれからもっと大きな仕事が待っている。
こんなところで怖気付いているわけにはいかないのだ。
健太はフッと息を吐き出すと、震える指で鍵を回した。
カチン…と、何かが外れるような機械音がして、健太は辺りを気にしながらロッカーの扉を開いた。
中に入っていたのは、鍵と見取り図が入っていた封筒と全く同じサイズの茶封筒が一つとと、一泊は出来るだろうか、ボストンバッグが入っていて…
健太は中身を確認することなく取り出すと、しっかりと胸に抱き、いかにも平静を装った風で、足早にその場を立ち去った。
多くの人が行き交う駅の構内を、脇目も振らず早足で駆け抜け、地上へと向かう階段を駆け上がった。
来た時とは別のルートを選んだためか、翔太郎が待つ場所からは若干離れてしまうが、これも安全に計画を実行するためにとった対策の一つだ。
健太は、からからに乾いた喉が貼り着くような感覚を感じながらも、翔太郎の元へと急いだ。
少しの時間も人の目に触れていたくなかった。
変装をしているとはいえ、人の目に触れれば触れる程、もしも計画が失敗に終わった時に負う危険はそれだけ大きくなる。
だとしたら、下手に目立つ行動は避けた方が良い。
尤も、エプロンドレスでボストンバッグを抱える姿は、そこそこに目立つのだが…