第2章 002
若干の疑念を抱えながら、受け取ったコインロッカーのカギを手に、健太は駅構内へと向かった。
あれ程抵抗を感じていたエプロンドレスも、駅前に点在するメイドカフェのおかげか、それ程気にならなくなっていた。
健太は添付されていた地図を頼りに、目的のコインロッカーへと急いだ。
慣れないヒールの踵を鳴らし、人混みを掻き分てて歩くその足取りは次第に速度を上げ、やがて…
「あった…」
地図上に示されたコインロッカーを見つけた瞬間、健太はそこに向かって走り出した。
ところが…
そこは、健太が想像していた通路に面したコインロッカーとは違って、幾つかのコインロッカーが立ち並ぶ…、言わば”一室”のようなスペースになっていて、構内を行き交う人からの視線が避けれるせいか、女子学生達が制服から私服に着替えたり、メイクをしたり…
中にはOL風の女性の姿も見える。
その光景に、
「マジかよ…」
一人ごちって肩を落とした健太は、自分が何故着たくもないエプロンドレスを着せられているのか、漸くその理由に気が付いた。
確かに、完璧ではないにしろ、”一応”見た目が女ならば、ある種異様とも思えるその空間に足を踏み入れたところで、白い目で見られることもない。
「でもな…」
それでも躊躇ってしまうのは、どれだけ外見を女のように装ってみても、中身はれっきとした”男”…、なのだからだろう。