第2章 002

程なくして翔太郎の元へとやって来た健太は、周囲に視線を配らせながら、運転席のドアを叩いた。

翔太郎は運転席のドアを開けると、サングラス越しに健太の格好を見て吹き出した。

｢お前、昔っからそういうの良く似合うね(笑)｣

｢うっせー。好きでこんな格好してるわけじゃねぇし…｣

健太が不貞腐れるのも無理はない。

何せ翔太郎がこの日のためにと用意したのは、メイド服さながらのフリルの着いたエプロンドレスで…

しかもスカート丈も膝上5センチと来たら、健太でなくても身に着けるのは遠慮したくなる代物だ。

｢つか、さっさとロッカーの鍵寄越せ｣

健太は辺りを気にしながら翔太郎に向かって手を差し出した。

｢ああ、うん、ちょっと待ってよ？｣

言われて翔太郎は、ジーンズの尻ポケットからくしゃくしゃになった茶封筒を取り出すと、それをそのまま健太の手にポンと置いた。

封筒の中には、駅構内にあるコインロッカーの鍵が、ご丁寧にロッカーの場所まで記したメモまで添えて入っている。

｢で？ ロッカーの中には何が？｣

実際に依頼主とやり取りをしているのは翔太郎一人だから、健太は詳しいことはあまり聞かされていない。

｢えっと…、ホテルのカードキーとか言ってたけど…｣

｢はあ？ そんなモンのためにわざわざコインロッカー使うとか、意味分かんねぇ…｣

健太が首を傾げるのももっともだ。

カードキーなら、プリペイド式携帯と同梱してしまえば、無駄な金を使う必要も、手間だって省けるのだから。