第9章 009
数分後、成瀬の通報を受けた警察官が数人、「0号室」へと駆けつけた。
マスターキーも無く、中から開けることも不可能だったドアキーは、榎本が持ち込んでいたPCからセキュリティセンターにアクセスすることで解錠され…
鮫島は成瀬に付き添われる格好で、自らの犯した罪を自白し、躊躇うことも無く手錠をかけられた。
そして驚いたことに、あれ程頑なに自分の罪を認めようとしなかった大野も、求められるまま両手を差し出し、手錠をかけられている。
鑑識官も加わり、騒然とする室内で、翔太郎と健太は所在無さげに片隅に立ち、忙しく動き回る人達の動きを、呆然と眺めていた。
時折、警察官に話しかけられることもあったが、
「私が指示をするまで、何を聞かれても”知らない”と答えるように」
警察官が到着する前に成瀬に言われた言葉を律儀に守っていた。
そのおかげもあってか、二人は深く追求されることもなく済み、開放されることになった。
尤も、警察からの呼び出しがあった場合には、その都度警察署に出向くことにはなるのだが、その際には成瀬が付き添うことを約束してくれた。
二人は漸く密室から出られた喜びと安堵に、少しだけ軽くなった足取りで巨大なホテルの一室を後にした。