第9章 009
「済まないが警察を呼んでくれないか」
鮫島が項垂れたまま言う。
「それは、自首する…と言うことで宜しいですか?」
成瀬が自首と口にしたことで、慌てたのは大野だ。
大野は鮫島の肩を掴むと、
「ちょっとアンタ何考えてんだよ…。つか、俺は関係ないから…」
乱暴に揺すった。
そしてズカズカと足音を鳴らし、部屋の入り口へと向かった…が、ドアノブを握ったところでドアが開かないことに気付き、一つ舌打ちをした。
その間にも成瀬は自身のスマホを手に、どこかに電話をかけ始め…
「…っだよ、クソッ!」
大野は苛立ち紛れにドアを一蹴りし、その場に胡座をかいて座り込んだ。
「いいか、俺は何もしてねーかんな!」
何とも往生際の悪い男だ。
その大野に対し、勿論成瀬だって黙ってはいない。
翔太郎の手を借りながら鮫島をソファに座らせ、耳元で何やら囁くと、続けて大野の肩を軽く叩くと、
「確かに、貴方は人を殺してもいません。ですが、横領の罪を逃れることは出来ないし、偽装誘拐に関しても同様にです」
少しだけ強い口調で諌めた。
そして鮫島にしたのと同じように、大野の耳元に口を寄せると、何かを囁きかけ、それから漸くソファに腰を下ろした。