第9章 009
「えっと…、分かるように説明してくんない?」
「そ、そうだよ、何でこんなこと…つか、まさかアイツもアンタが…?」
詳しい説明を求める二人に、大野は垂れ気味の目をキッと鋭くさせ、鼻にフンと鳴らすと、さも面倒臭そうに溜息を一つ落とした。
「そうだよ、俺だよ。でも別に俺悪くないし…。悪いのは弘行だし」
そう言った大野の口調には、全く悪びれた様子は見られない。
それどころか、死んで当然だとばかりに爪を噛んでいる。
「それはどういう意味ですか?」
沈黙する榎本と鮫島、そしてひたすら困惑する翔太郎と健太、その中にいて唯一冷静沈着な姿勢を崩さない成瀬が、組んだ両手の上に顎を乗せ、大野を見上げた。
その目は、一見すれば穏やかそうにも見えるが、実際にはそれまでに見せたこともないような冷徹なもので…
大野は一瞬怯んだような素振りをみせるが、すぐに開き直ったように成瀬を睨み返すと、オットマンの上にドカッと腰を下ろした。
「だってさ、好きな人が出来たって言ってんのに、アイツ全然別れてくんねぇんだもん。酷くない?」
「ひ、酷くないってアンタ…、だからって普通殺すか?」
「だって邪魔だったんだもん」
あまりにもあっけらかんとした大野の物言いに、健太は信じられないとばかりに天を仰いだ。