第9章 009
「不思議に思われるのも当然です。ですが、先程私が送ったメールを受け取ったこのスマホ自体が、確かな証拠にはなりませんか?」
そう言って成瀬はメールの受信画面を、再び二人に向けた。
「そ、それはそうだけど…」
「つか、何か? 自作自演だったってこと…なのか?」
「え、そ、そうなの?」
直感で成瀬の意図を察した健太の横で、翔太郎は更に深く頭を抱え込み、両手で髪をぐしゃぐしゃに掻き混ぜた。
「で、でもだよ? 自分で自分を誘拐させるとか、俺意味分かんないんだけど…」
ボサボサになった頭を、更にボサボサにさせ、首を傾げる翔太郎…
すると…
「ふ、ふふふふふ…」
突然大野が気味の悪い笑い声を立て始めた。
そして、それまで座っていた脚の長いカウンターチェアから勢い良く飛び降りると、腰を左右に捻り、最後には首をコキッと鳴らした。
「あーあ、上手く行くと思ったんだけどな…、残念」
「え、え、ちょっとどういうこと?」
「まさかアンタ…マジで言ってんの?」
翔太郎も、そして健太も、それまでいかにも気弱そうにしていた大野の変貌ぶりに、呆然…というよりは唖然とした様子で、どうにか混乱した頭を整理しようと試みるが、なかなかそれも上手くいかず、何度も首を捻っては、目を白黒させた。