第9章 009

「仰る通りです。ですが、携帯電話のメールサービスには、予約送信だけではなく、転送サービスと言うのもありますよね？」

「ああ、確かに…」

機械物には疎い翔太郎だが、そう言ったサービスがあるのは、薄らとではあるが知っていた。

「すみません、依頼人から預かった携帯電話を貸して頂けますか？」

「あ、ああ、どうぞ…」

「ありがとうございます」

成瀬は翔太郎から携帯電話を受け取るも、翔太郎が受け取った最後のメールを開いた。

「ここを見てください」

成瀬が携帯電話の画面上部を指で差す。

そこには、メールの宛先と、送信者のアドレスが表示されていて…

「これがどうしたの？」

首を傾げる翔太郎の前で、成瀬は弘行が持っていた携帯電話のメール画面を開いた。

それは、翔太郎に向けて最初に送られたメールで、同じように送受信者のアドレスを表示させると、当然のことだが宛先には翔太郎のメールアドレスが記入させている。

ただ、問題はそこではないのだと、成瀬は首を緩く横に振った。

「この、最初に送られたメールの送信元と、最後に送られたメールの送信元が違うのが分かりますか？」

言われて二人はほぼ同時に身を乗り出し、二台の携帯電話の画面に食い入った。