第9章 009
「どうかしましたか?」
「えっと、ちょっと待って?」
翔太郎は脳ミソフル回転で数時間前の記憶を呼び戻すと、
「最後のメール貰った時には、この部屋には鮫島社長もいて、榎本さんもいて、おまけに携帯の持ち主である弘行さんも死んじゃってたわけじゃん?」
「そういうことになりますね」
「だったらさ、ここにいる人達がメール送るのって無理なんじゃないの?」
翔太郎の言う通り、最後の確認メールの着信があった頃には、全員が部屋に集まっていたことになり、翔太郎が知りうる限りでは、怪しげな行動は誰にも見られなかった。
だから翔太郎は、鮫島と榎本の大野誘拐に関しての関与は否定した…つもりだった。
ところが成瀬は唇の端を軽く持ち上げると、
「実は可能な人が一人、いるんです」
手帳をパタンと閉じた。
「え?」
その場にいた全員が、一瞬息を飲んだのが分かった。
「でもあれだろ? 携帯電話自体は、弘行さんが持ってたわけだろ? だったら…」
「うん、そうだよな? だってメールの予約だっけ?もしてなかったんでしょ? やっぱり無理だよ」
翔太郎と健太は顔を見合わせると、二人同時に「うん」と頷いた。