第9章 009
両腕をしっかりと組み、眉間に深い皺を刻んで考え込む翔太郎の隣で、健太が深い溜息を一つ落としてから、
「本当に俺達の力になってくれるんだよな?」
成瀬に向かって鋭い視線を向ける。
「ええ、勿論です」
「分かった。だったら…フガッ…」
慌てた翔太郎が咄嗟に健太の口を塞ぎにかかるが、健太はそれを払い除け…
自身が持たされたプリペイド式携帯電話の画面に、依頼者から送信されたメールの文面を表示させた。
「これは? 見たところ、誘拐を教唆させるような文章にも読み取れますが…」
「ああ、そうだよ。俺らは、そこの大野って奴を誘拐しろって頼まれて、そんで指示通りにこの部屋に運んで来たら、アイツが死んでて…」
最初は強気だった口調が、徐々に消え入りそうなくらいまで小さくなり、健太はとうとう俯いてしまった。
膝の上で握った拳は微かに震え、その様子をすぐ真横で見ていた翔太郎は、ついさっき健太の口を塞ごうとしていたその手を、健太の手に重ねた。
「このメールの送り主に心当たりは?」
聞かれて二人は揃って首を横に振り、
「では、彼…弘行さんとの面識も?」
続く質問にも首を横に振った……が、
「あれ?」
不意に浮かんだ疑問に、翔太郎が首を傾げた。