第8章 008
「あちらでお話しますので、先に戻っていて頂けますか?」
成瀬に言われ、渋々翔太郎は全員が顔を揃えるリビングに戻った。
ソファに腰を下ろした翔太郎に、健太がすかさず、
「何か見つかったのか?」
耳打ちをするが、翔太郎は首を横に振るばかりで、何も答えようとはしない。
「なんだよそれ…。まさかヤバいモンでも見つかったんじゃないだろうな?」
「知らないよ…。だって見せてくれないんだもん…」
不信を顕にする健太に、翔太郎は唇を尖らせて見せる。
「は? 意味わかんねぇ…」
「俺だって意味わかんないよ…」
翔太郎が不満を訴えるのも無理はない。
成瀬が弘行のポケットから何を取り出したのかは、翔太郎には一切知らされていないのだから。
翔太郎が唇を尖らせ、頬を膨らませたその時、翔太郎の尻ポケットの中で、プリペイド式携帯電話がブルッと震えた…が、明らかにこれまでとは違う震え方に、翔太郎は若干動揺した様子でポケットを手で押さえた。
「何だよ、どうかしたのか?」
異変に気付いたのは、健太だった。
「良く分かんないだけど、多分電話かも…」
「え?」
健太が目を丸くするのも当然だ。
これまでの連絡の殆どが、依頼者からのメールばかりで、電話がかかって来たことは、一度だってない。
二人は顔を見合わせ、首を傾げた。