第8章 008
唸る鮫島の様子に、成瀬はフッと笑うと、
「安心して下さい。もし仮に鮫島社長が犯人だったとして、裁判では無罪を勝ち取りますので」
自信ありげに言い放った。
「あ、ねぇ、それってさ、別にこの件と関係なくても無罪に出来るの?」
「事件性の有無や、深刻度にもよりますが、過去には無差別殺人の無罪判決を捥ぎ取った経験もありますから、恐らく可能でしょう」
「じゃあさ、じゃあさ、もしもさ、俺や健太が捕まったりとかしたらさ、お願いしたたゃっても良い?」
とんでもないことを言い出す翔太郎に、慌てたのは他でもない健太だ。
健太は勢い良く立ち上がると、翔太郎の腕を掴んだ。
「何考えてんだよ、お前は…」
「いや、だってさ、俺らだって誘拐したことバレたら、確実に捕まるわけだろ?」
「それは…そうだけど…。つか、そういうことじゃなくて…」
あっけらかんとする翔太郎に、健太は呆れたとばかりに首を振ると、翔太郎の鼻先に人差し指を突きつけた。
「いいか、これ以上余計なこと言うなよ? もし言ったら…」
「言ったら…?」
翔太郎の喉がゴクリと鳴る。
「お前とは絶交だ」
「え、それは困る…」
「だったらお前は黙ってろ。いいな?」
ピシャリと言われて、翔太郎は両手で口を塞ぐと、ウンウンと何度も大きく頷いて見せた。